アプリケーションやソフトウェアを、インターネットなどを介して利用するクラウドサービスは、大きくパブリッククラウドとプライベートクラウドの2つに分けることができます。前編となる本稿では、パブリッククラウドにフォーカスし、「パブリッククラウドとは、どういうクラウドサービスなのか」といった基本から解説。さらに、主要な5つのサービスを取り上げ、それぞれについて特長を紹介します。
後編「いまさら聞けない…プライベートクラウドとは?」を読む
パブリッククラウドとは?
パブリッククラウドは、個人や企業向けにコンピューティング環境を共有・共用型で提供するクラウドサービスです。これに対し、コンピューティング環境を1社専有・専用型で提供するクラウドサービスをプライベートクラウドと言います。両者の大きな違いは、提供形態(共有・共用型か、専有・専用型か)とユーザ層(個人を含むか、企業・組織のみか)で、プライベートクラウドに対するパブリッククラウドのメリット/デメリットは下表のようになります。■パブリッククラウドとプライベートクラウドの比較
| パブリッククラウド | プライベートクラウド |
|---|
| メリット | ・導入コストが低く済む・専門知識が不要 | ・高度なセキュリティコントロールが可能・企業ごとのカスタマイズがしやすい |
| デメリット | ・セキュリティコントロールに限界がある・企業ごとのカスタマイズが制限される | ・導入コストが高くなる・専門知識を持った人的リソースが必要になる |
パブリッククラウドの種類
パブリッククラウドは、大きく分けてPaaS、IaaS 、SaaSの3種類があります。できることやユーザの自由度(カスタマイズ性)が異なるため、用途や要件にあわせて利用する必要があります。
IaaS(Infrastructure as a Service)
ハードウェア、OS、ハイパーバイザー、ネットワークなどのインフラを提供するクラウドサービスです。3種類の中では最も自由度が高く、多様な用途に対応しますが、OSより上は自社で構築する必要があり、一定のスキルが求められます。
PaaS(Platform as a Service)
IaaSで提供されるインフラとあわせ、ミドルウェアやランタイムも提供するクラウドサービスです。複数の開発者が共同作業を行える開発プラットフォームとして、アプリケーションの開発速度を向上させます。
SaaS(Software as a Service)
アプリケーションをインターネット経由で提供するクラウドサービスです。OSなどの環境やソフトウェアの仕様は事業者によって決められカスタマイズできない分、運用保守の負担もほとんどなく気軽に導入できます。
主要な5つのパブリッククラウドサービスを比較
以下では、IaaS/PaaSにフォーカスして主要なパブリッククラウドを比較・紹介します。
| クラウドサービス | 特長 |
|---|
| AWS | 業界最大手で200以上の幅広いサービスを提供する |
| Microsoft Azure | Microsoft製品との親和性やActive Directoryとの連携性にすぐれる |
| Google Cloud | GmailやGoogle documentと同等のインフラを利用でき、これらのアプリとの連携が容易 |
| IBM Cloud | AI「Watson」が標準提供され、ベアメタルサーバのバリエーションが豊富 |
| Alibaba Cloud | アジアでの展開に強みがあり、中国でのシェアは45%である |
AWS
AWS(Amazon Web Services)はAmazon.com, Inc.が提供しているクラウドサービスです。240を超える国々で31のリージョンと88の可用性ゾーンを運用しています。クラウドサービス業界では、先行して開始されたサービスであり、現在でもトップシェアを誇ります。サービス系アプリやビッグデータ分析、ストレージなど200以上のサービスで構成され、幅広い用途に使えるのがメリットです。クラウドサービスを選ぶ際にはまず選択肢として挙げられるでしょう。
Microsoft Azure
Microsoft Azureは、Microsoft OfficeやWindowsなどで有名なMicrosoft社が提供しているクラウドサービスです。世界60以上のリージョン、48の可用性ゾーン、140ヶ国以上で、100を超えるサービスが提供されており、新しいサービスも次々に追加されています。一番の特長はMicrosoft 365との親和性でしょう。同じMicrosoft製品であるため連携がスムーズにできるのです。またActive Directoryとの連携にも優れており、Active Directoryを使った社内ネットワークをクラウドに移行したい場合などには有力な選択肢となります。
Google Cloud
Google CloudはGoogleが提供しているクラウドサービスです。世界35のリージョン、106の可用性ゾーン、176ヵ所のネットワークエッジのロケーションを保有し、200以上の国と地域でサービスを提供しています。Google社が提供しているGmailやGoogle documentなどと同等のインフラを利用できるのが特長で、これらのアプリとの連携も容易にできます。したがって、Google製品をよく利用する企業であれば有力な候補となるでしょう。
IBM Cloud
IBM Cloudは、IBM社が提供しているクラウドサービスです。世界10のリージョンと27の可用性ゾーンを保有し、200以上のサービスを展開しています。ベアメタルサーバによる高いパフォーマンスと拡張性を強みとし、AI「Watson」が標準提供され、無料で利用できます。専用のリソースを必要とする高負荷なワークロードや、AIを用いた高度なデータ分析を必要とするなら有力な選択肢となるでしょう。
Alibaba Cloud
Alibaba Cloudは、中国の大手IT企業であるアリババグループと、日本のソフトバンクが展開しているクラウドサービスです。世界21の地域に21のリージョンと63の可用性ゾーンで運用されており、中国でのAlibaba Cloudのシェアは45%と、トップシェアを誇ります。グローバル展開、特にアジアにおける展開に強みがあるのが特長です。アジアを発信地とし、中国も含めたビジネス展開がしたいなら有力な選択肢となるでしょう。
まとめ:ベアメタルサービスでクラウド移行をあきらめない!
DXに取り組む企業を中心に、オンプレミスを廃止してクラウドに移行する“クラウドシフト”が加速していますが、既存のシステムをそのままクラウドに上げることが技術的に困難なケースや、セキュリティや再構築コストなどの面でクラウド移行をあきらめるケースも少なくないようです。こうしたケースにおいて、検討の価値があるのが、物理サーバ環境を1社専用で提供するベアメタルサービスです。物理インフラを共有し、仮想サーバを提供するパブリッククラウドに対し、既存システムの技術的要件や独自のセキュリティポリシーを満たした、プライベートな環境を構築できます。このベアメタルサービスを強みとしているのが、主要クラウドサービスの一角を占める「IBM Cloud」です。他社に先駆けベアメタルサービスを提供し、サービスメニュー(構成オプション)のきめ細かさ(充実ぶり)において“一日の長”があります。個社ニーズに即して作り込まれた基幹系や業務系のシステムについても、オンプレミスとほぼ同等の物理環境をクラウド上に構築でき、オンプレミスの日常的な運用負荷から解放されます。
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