今さら聞けない “クラウドネットワーク”について解説

2023年03月28日掲載

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ビジネス環境の急激な変化や、テレワークなどネットワークへの多様なアクセスなどに対応するため、自社が保有するオンプレミスの情報基盤をクラウドへと移行する企業が増えています。クラウドサービスでは、事業者(ベンダ)が用意する情報基盤上に仮想マシン(VM)やネットワークを構築し利用できます。本コラムでは、クラウドにおけるネットワークの考え方や基本的な仕組みについて解説します。

目次

クラウドネットワークとは?

まずは、クラウドネットワークについてより深く理解するうえで不可欠な、物理ネットワークと仮想ネットワークという2つの概念について確認しておきましょう。

①物理ネットワークとは

物理ネットワークとは、コンピュータ同士を接続するケーブル、コンピュータとケーブルを接続するアダプタ、ネットワークを制御するルータやスイッチなどのハードウェアから構成される通信網です。物理ネットワークを構築すれば、ハードウェア間でのデータ通信が可能となります。代表的な物理ネットワークには、ローカルエリアネットワーク(LAN)と広域ネットワーク(WAN)の2種類があります。LANは、オフィスビルや大学、工場の敷地内などでのデータ通信に対応します。これに対して、WANは通信事業者によって構築され、国内や海外などより広い範囲でのデータ通信を可能にします。皆さんが利用するインターネットもWANの一種です。クラウドサービスを遠隔地にある拠点から利用できるのは、物理ネットワークが世界中に張り巡らされているお陰と言えます。

②仮想ネットワークとは

仮想ネットワークを理解する上で欠かせない概念が「仮想化」です。仮想化とは、CPUやストレージ、メモリなどのハードウェアリソースをソフトウェアで再現する技術です。したがって仮想ネットワークとは、仮想マシン同士があたかも物理的にネットワーク接続されているかのようにデータ通信できる論理的なネットワークだと言えます。クラウド利用者は、物理ネットワークをほとんど意識せずに仮想ネットワークを構築できます。ネットワークの仮想化により、ネットワーク帯域の幅を論理的に拡大or縮小して柔軟に対応できるようになります。

リージョンとゾーンとデータセンタ

クラウドサービスでは、リージョンやゾーンといった言葉がよく登場しますが、これらはクラウドネットワークの設計や運用を理解するうえでも重要です。

リージョン

リージョン(Region)は「領域」や「地域」を意味し、クラウドサービスを提供するデータセンタが立地している地域を指します。クラウドサービスを提供するベンダは、世界中にデータセンタを保有しています。例えばIBM Cloudの場合、国内では東京と大阪に2つのリージョンがあります。リージョンはクラウドサービスが高い可用性を担保するうえで欠かせません。自然災害や火災などが原因で特定のリージョンのデータセンタが破損しても、複数のリージョンにまたがってシステムを分散させたりバックアップを取っておけば、DR(災害復旧)やBCP(事業継続計画)の遂行が容易になるためです。

ゾーン

ゾーン(Zone)は「区画」を意味し、リージョンをさらに小さく区分した領域を指します。アベイラビリティーゾーン(AZ)と呼ぶクラウドサービスもあります。ちなみにIBM Cloudの場合は、東京リージョン・大阪リージョンそれぞれに、3個所のゾーンを保有しています。ゾーンも、リージョンと同様に地理的に離れた拠点に設置されており、複数のゾーンに同じクラウド環境を用意し冗長性をもたせることで、特定ゾーンのデータセンタで障害が発生しても、別のゾーンのクラウド環境に切り替えて利用しビジネスへの影響を回避できます。

データセンタ

データセンタは、サーバやネットワーク、ハードウェアを安定に稼働させるために必要な電力や空調などを設置する物理的な施設です。データセンタには、企業がオンプレミスで保有するものと、クラウド事業者が運営するものがあり、クラウドサービスは、クラウド事業者が運営するデータセンタを多数の企業が共有して利用するサービスと考えればよいでしょう。オンプレミスのデータセンタでは、サーバなど機器を自前で用意する必要があり、膨大な初期投資が必要になりますが、共用型のクラウドサービスの場合、機器などインフラ整備はクラウド事業者がおこない、ユーザは月額利用料だけで利用できます。

クラウドネットワークについてのTips

クラウドではネットワークは仮想化される

クラウド事業者は、データセンタ内のサーバ同士を物理ネットワークで接続していますが、クラウドサービスを利用するユーザはこうした物理ネットワークを意識することなく、仮想ネットワークを利用してサーバに相当する「インスタンス」などのクラウドリソースと接続できます。ユーザ企業の管理者は、クラウド上にプライベートな仮想ネットワーク(VPC)を構築して、リソースごとにアクセスを制御できます。

リージョン間やゾーン間でも仮想マシン同士で通信が可能

クラウドサービスでは、まずリージョンやゾーンを選択することになります。このとき、複数のリージョンやゾーンをまたいで仮想ネットワークを設計することで、リージョン/ゾーン間で可用性を高めることができます。ただし、リージョン間の物理的距離が遠いほど、データ転送を要求してから応答までの遅延(レイテンシー)が大きくなるため、用途などを考慮してネットワークを設計する必要があります。

リージョン間のデータ通信で発生する費用にも注意

クラウドサービスではユーザが利用したリソース量に応じて課金される「従量課金」が一般的です。ストレージの容量やインスタンスのスペックなどに目が行きがちですが、リージョン間のデータ通信についてもトラフィック量に応じて課金するサービスが多く、上述の冗長構成を採用する場合は要注意です。

まとめ:IBM Cloudで、データ転送料を抑えてDR対策

物理インフラの調達や日常の運用から解放され、従量課金で利用できるクラウドサービス。ネットワークについても、ニーズに応じて柔軟に帯域を迅速に拡張or縮小でき、省コストと適正パフォーマンスの両立が可能ですが、DR対策などでリージョンを跨いでデータをバックアップしたり、システム自体をレプリケーション/フェイルオーバーしたりといったケースでは、リージョン間のデータ通信料がかさんでしまう可能性もあります。
こうしたケースにお勧めなのが「IBM Cloud」です。IBM Cloudでは、すべてのデータセンタ間の通信料が無料のため、たとえば東京リージョンと大阪リージョンでDR構成を組む際も、レプリケーションのためのデータ転送料は一切発生しません。拠点をグローバルに展開する企業の場合は、各拠点最寄りのリージョンを契約することで、レイテンシを最小化しつつ、拠点間のデータ通信料を最小化することができます。